EUからの離脱を選択した英国③~その方向性は新型コロナ後の世界が向かう方向だった?
EU域内や域外からの移民を阻止する目的でEUからの離脱を選択して英国が捨てたもの、失ったものはEUの「パスポート権」であった。
この1年間の移行期間は本年12月31日で終了するそうで、本格的な影響は来年の1月から出てくるということらしい。
■EU離脱によって「パスポート権」を失う影響
EUの法律で、加盟国における保険会社は、各個別の国のライセンスを取得しなくても、ブロック全体で、業務を実施し、(金融商品や保険などあらゆる)サービスを販売することができる権利が与えられ、これを「パスポート権(passporting rights)」と呼ぶそうだ。当然物流への影響なども国民生活に直結した問題のようだ。
金融市場への影響
昨年の3月11日に英独立系シンクタンクのニューフィナンシャルが公表したリポートによると、275社以上の金融機関が英国のEU離脱に伴い計1兆2000億ドルの資産・資金および数千人の人員を英国外に移管する計画とし、(その費用に最大40億ドルの費用負担が生じるものの)ロンドンから他の移管先として、100社がロンドンと時差のないアイルランドのダブリンを移管先に選んだ。
このほか、60社はルクセンブルク、41社はパリ、40社はフランクフルト、32社はアムステルダムを移管先としたそうで、これらの都市はいずれもロンドンとの時差が1時間早い場所に位置する。
ニューフィナンシャルの創業者ウィリアム・ライト氏は、「ロンドンへの悪影響は想定以上で、今後さらに拡大する」「英国の欧州銀行・金融業界における影響力は低下し同業界からの税収が減少し、EU向け金融サービス輸出も減少する」との見通しを示していた。
リポートでは、銀行・金融活動の10%が移管すれば、英国の税収が約1%減ることになるなどとも指摘。移行期間が終わってから今後数年間の経過によってその数字は変わるらしい。
しかし金融センターとしてのロンドンの位置付けは特別で、それは、会計・法律等の専門知識を有する人材が豊富に揃っていること、世界の標準言語である英語を母国語としている国という強みなど。
従って、ロンドンは引き続き高い位置付けを保持できる可能性は高いだろうといわれており、金融市場におけるロンドンの地位低下は起こらないという判断だったようだ。
結局現在もロンドンは金融センターとしては圧倒的な地位を維持するとの見通しだそうで、その一方、他の欧州の都市が徐々にロンドンの座に迫ることになるなどという指摘も。
保険会社や保険業務への影響
「パスポート権」を失う影響は、特にこれを広範囲に使用しているLloyd'sなどの保険会社のロンドン市場及び損害保険市場にとって大きなものとなることが想定されていた。
「パスポート権」を失う影響は、特にこれを広範囲に使用しているLloyd'sなどの保険会社のロンドン市場及び損害保険市場にとって大きなものとなることが想定されていた。
「パスポート権」の喪失は、保険会社が、ビジネス拠点の再構築を余儀なくされることにつながるため、新たな(子会社などの)保険会社の設立と業務の移転に伴う一時的な費用だけでなく、これらの会社の継続的な運営経費も追加負担として加わってくることになると指摘。
ただし、既にEU域内に子会社を持つ保険会社など、その影響度合いは各社それぞれに異なるということらしい。
米国や日本を含むアジアの保険会社は、英国に欧州本部を置いているケースや、英国を大陸欧州へのゲートウェイとして位置付けていたケースが多かったために、これらの会社も本部を別のEUの加盟国への移転などの必要が生じたことで、英国人従業員などの雇用労働機会の損失を生むことになるマイナス面も指摘されていた。
ただし、既にEU域内に子会社を持つ保険会社など、その影響度合いは各社それぞれに異なるということらしい。
米国や日本を含むアジアの保険会社は、英国に欧州本部を置いているケースや、英国を大陸欧州へのゲートウェイとして位置付けていたケースが多かったために、これらの会社も本部を別のEUの加盟国への移転などの必要が生じたことで、英国人従業員などの雇用労働機会の損失を生むことになるマイナス面も指摘されていた。
これに関しては新型コロナの世界的パンデミックによる影響などが加わったことで、EU離脱による影響がどの程度なのかなかなか判断しづらいのではないだろうか。
■物流への影響(JETROの「ビジネス短報」より引用)
英国政府は今年の9月23日、2020年12月31日の移行期間終了時に起こり得る英国・EU間を移動する貨物の混乱について、想定され得る最悪のシナリオ(Reasonable Worst Case Scenario、RWCS)を公表。
RWCSはEU加盟国が移行期間の終わりに英国の物品に第三国向けと同様の規制を課すことを想定しており、このシナリオによれば、2021年1月1日時点では英国からEUに向かうトラックなどの貨物車両の40~70%が新たに生じるEU側の規制への対応準備ができていない可能性があると警告している。
RWCSには、以下の予想が記載されている。①英仏海峡トンネルや港では、30~50%の貨物車両で国境通過のための適切な準備がなされていない可能性があり、これにより物流が通常の水準の60~80%に低下。
②国境手続き不備の貨物車両の滞留により、英仏海峡トンネルが位置するイングランド南東部ケント州で最大7,000台の港行き貨物車両の列ができ、最大2日の遅延が発生。
③貨物車両が英国側で滞留することで、EUへ行き製品を輸出するのに遅延が発生するだけでなく、EU側での貨物集荷遅延につながり輸入と輸出の両方で同程度の混乱が発生。
④移行期間終了当初、2021年の1月の初めの数日は混乱が少ないことが予想されるが、最初の2週間で貨物需要が高まるにつれ混乱が拡大。
⑤2021年の最初の3カ月で対応準備が進み、混乱と物流能力が改善すると想定されるが、フランスが運送業者に対しパスポートチェック手続きを緩和するか、チェック体制を拡充しなければ混乱は継続。
⑥冬の新型コロナウイルス感染拡大で貨物需要が低下し、国境管理の準備不足による物流の混乱が抑制される可能性はあるが、港湾、国境で働く職員の感染防止対策が悪影響を与える可能性も。
⑦その他の港の多くでは、適切な書類がない貨物車両は英国での積み込みを拒否すると示唆されている。これによる持続的かつ大きな混乱が発生する可能性は低いものの、行列と遅延に対処するための計画が必要。
英国政府は、RWCSは何が起こるかを予測する目的ではなく、政府としてリスクに応じた合理的な準備や計画を、責任をもって実施するために使用するとしているそうだ。
マイケル・ゴーブ内閣府担当相は声明で「政府は、企業、個人が将来の変化に対応するために必要な支援を行う。既に国境での新たなテクノロジー、インフラ増強、対応人材増員に7億500万ポンド(約958億8,000万円、1ポンド=約136円)を投資している」とし、「通関仲介業者に新たな職員の募集および訓練のための8,000万ポンドを超える助成金を準備するなど、さまざまな対策をとっている」と述べたそうだ。
英国政府は主に初めて輸出入手続きを行うことになる国内事業者を対象に通関仲介業者と宅配事業者の一覧を公開、随時更新するなど準備を促している。
■EUに対して英国が負担する離脱費用
こうした混乱が落ち着くまでにどのくらいの年月や自国に対する追加の費用負担が発生するかについてはまだ全体像は明らかではない。
現在までにすでに英国が離脱のためにEUに対して負担した額はなんと「ISS(国際宇宙ステーション)2つ分の費用を超えている」などともいわれている。英国は約6700万人の自国民をグレートブリテン島の中に隔離するために国際宇宙ステーション2個分の費用を負担した、ということらしいが。
EUとの間では「合意なき離脱」であったと批判されたが、英国はそれでもグレートブリテン島という自国の島に混乱の多いEUから自国を「隔離」し、独自の道を歩む模索を始めた。英国は各国との間で個別にFTA条約を結ぶことになるそうで、気の遠くなるような労力であろう。
彼らにとり、日本はある意味でモデルケースでもあろうし、日本にとり英国の選択の本当の理由を深く検証することも今後の方向性を決めるうえで大変重要なのではないだろうか。
「人が動くと経済が活性化するはずである」としてつくられたのがEUであったのならば、新型コロナCOVID19によって世界は一変し、デジタル化、リモート化、無人化が加速していく方向で進んでいくらしいが、この変化はある意味で英国が選んだブレグジットと同じ方向性といえるのではないだろうか。

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